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「神様、どうか私に…」
そう呟き、泉に背を向けコインを投げた。
そこは、イタリアの観光名所、トレビの泉。
「コインを1枚投げると、再びこの場を訪れる事ができる。」
「2枚投げると、素敵な人と出会う事ができる。」
「3枚投げると、今の恋人と別れる事ができる。」
私は、添乗員の話を信じ、2枚のコインに夢を託した。
二十歳で初めて彼氏ができ、幸せな時を過ごしたが2年程付き合い、別れを告げた。
独りの自由を求めていた…
それから約3年…。
ローマ観光を終え、眠気の残る目をこすりながら移動バスを降りた。
外は真っ暗で、目の前の建物のライティングだけが、キラキラと輝いて見えた。
「リストランテ・ピエモンテーゼ」
旅行日程によれば、そこは、ピザ食べ放題のレストラン。
制限時間は90分。
店内は、日本からのツアー客で溢れていた。
席に着き、しばらくグループの中で歓談していが、待っても、待っても、ピザは来ない。
ウェイターは厳しい表情で駆け回っている。
「添乗員さ~ん、ピザはまだ?あ、このビール、サイズが違う。」
誰かが叫ぶ。
添乗員は、トム・クルーズ似のウェイターを捕まえて、せかす。
ビールのサイズを尋ねると、ウェイターは眉間にしわを寄せ、違うサイズのグラスに水を入れて持ってきた。
それを問題のグラスに注ぎ、容量は全く同じだと証明した。
「うるさい!何で分からないんだ!」
小さな声ではあったが、内容は、はっきりと聞き取れる発音…
彼は速足で厨房へと戻って行った。
「そんなに、怒ることないのに…。」
添乗員は少し涙ぐんでいた。
トム・クルーズ顔が怒ると迫力がある。
なんだか怒りっぽい人…。
そんな印象だった。
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