chapter.1

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冬の寒さも息を潜め、最近は本当に暖かくなってきた。 季節は春。 春眠暁を覚えず、とはよく言ったもので、僕は布団の中で惰眠を貪っている。 人は寒くなくても、朝の布団からは、なかなか出られないものだ。 ただ、僕には二度寝を楽しむことはできない。 何故なら、 「幹也~!起きろ~!!」 来た。 ドタバタと、階段を駆け登ってくる音が聞こえる。 毎朝の事ながら、騒々しい事この上ない。 バンッ、とドアが痛々しい音を響かせて開かれた。 「いつまで寝てるのよ!ほら起きて起きて。遅刻しちゃうよ?」 声の発生源は、腰まである髪を、後ろでひとまとめにした、可愛いというより綺麗という形容詞の似合う女の子。 ぱっちりとした目に、高い鼻、唇はちょっと薄めだが、全体的にバランスが取れていて、充分過ぎる程美少女と言えるだろう。 薄く施した化粧が、綺麗な顔によく映えている。 女の子の名前は「桜井遥」。 子供の頃からの付き合い、要は幼なじみで、僕の大事な彼女でもある。 中学を卒業した春休みに、僕らは付き合い始めた。 小さい頃から、いつも一緒に遊んでいて、何をするにしても、側にはいつも遥がいた。 遥を初めて、女の子として意識したのは、中学に入ってすぐだった。
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