chapter.1

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遥の笑顔は周りに伝染する。 遥が笑っていると、周りまで明るくなるのだ。 そんな笑顔だったり、遥の明るさ、優しさを、僕は好きになった。 僕が素直に謝ったので、遥は今とても上機嫌だ。 楽しそうに、桜吹雪の中を歩いている。 今年はまだ桜が残っていて、道を彩っている。 校門が見えてきた。 白峰学園は生徒数500人程度の、中型の規模の学校だ。 学校施設は、一通り揃っていて、贅沢なことにプラネタリウムから、果ては時計塔まである。 この時計塔は、学園の設立当初から存在する年代物で、「アカシアの木」なんて名前まで付けられている。 不意にアカシアの木から鐘の音が響く。 ・・始業の合図だ。 僕らは顔を見合せ、走り出した。 入学早々、遅刻する訳にはいかない。 遥は僕より足が速く、一緒に走ると、すぐに差が生まれる。 段々息が上がってくる。 突然、遥に手を捕られた。 「がんばって!」 遥は僕の手を引き、また走り出す。 普通立場が逆なんじゃないか、と思いつつも、そんなことを言えば遥の機嫌を損ねるので、胸の内にしまいこむ。 校門をくぐり、グラウンドを突っ切って、下駄箱に向かう。 ただ走っているだけなのに、遥と一緒だと思うと気分が浮かれてくる。 こんな幸せが一生続けばいい、僕はそう思った。
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