chapter.1

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下駄箱で靴を履き替え、教室に向かってラストスパートをかける。 1年生の教室は5階にある。 5階までの階段を駆け登るのは、なかなかきつい。 僕はもう肩で息をしている。 階段を上りきり、最後の直線である、廊下を走る。 廊下を走るな? 今はそんなことを言っている場合ではない。 ゴールまで後、5、4、3、2、1m。 着いた! 教室のドアを、横にスライドさせ、開くと・・・先生はまだ来ていなかった。 間に合った・・。 僕は遥と顔を見合せ、深く息を吐くと、その場に座り込んだ。 「おはよう、姫島、桜井。今日も仲がよさそうでうらやましいよ」 中学の時に僕や遥と同じクラスだった、平山悠太が声をかけてきた。 普段はふざけているが、何かあった時は頼りになる奴だ。 「そんなことないってば!からかわないでよ、もう・・・」 遥は恥ずかしそうに、自分の席に歩いていく。 ちなみに俺と遥の関係は、すでにクラス内では公然の秘密となっている。 入学式から一週間、毎日一緒に登校してきて、お互いに名前で呼びあっているのだ。 もちろん用事がなければ、帰りも一緒だ。 これで気付かない方がおかしいだろう。 僕も最初は気恥ずかしかったが、もう慣れてしまった。
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