17人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
あの時の夜空を今でも思い出せる。
今の俺達はもう高校生だ、通常ルートも分かっているし、近道なんかも分かる。
でも俺達は敢えて、その道を素通りし、思い出深い獣道を歩き続けた。
桜花が握る手、あの時と変わらない桜花の手。
握っているととても安心して、落ち着けた。
小さい頃では一時間くらいかかった道のりを、数分で踏破した。
丘の真上に広がる夜空は、満天の星空であった。
昔座ったベンチに腰掛け、夜空を見上げる俺と桜花。
「寒くないか?」
「………少し、寒いかな」
桜花はそう呟くと、俺に身体を寄せ、もたれかかった。
「………あんまり変わらないんじゃないか?」
「ううん、あったかい…………真紅の…………側に居られる………だけで」
桜花の顔を見ると案の定真っ赤だった。
頑張って喋ってたんだな、俺はそう思うと、余計に桜花が愛おしくてたまらなくなった。
「桜花……………」
「……………?」
桜花は微笑んでいる、ほんのりと頬をピンクに染めて…………。
「…………好きだよ、永遠に…………側に居てくれないかな」
俺は心の奥底に溜め込んだ言葉を吐き出した。
カァっと顔が熱くなるのが分かる。
桜花はそんな俺の顔を見て一瞬見つめて、また微笑んだ。
「私も……………真紅の事、好き…………だよ」
見つめ合う俺達、磁石のように惹かれ合い、桜花は目を瞑った。
俺も目を瞑り、顔を近づけて……………
「お色気てるところわりぃな、貴様の魂貰い受けるぜ」
不意にかけられた言葉に、ムードはぶち壊れた。
後ろを振り向くと、黒い烏のような翼をはやした人間が、大きな鎌を構えていた………。
最初のコメントを投稿しよう!