あの丘

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あの時の夜空を今でも思い出せる。 今の俺達はもう高校生だ、通常ルートも分かっているし、近道なんかも分かる。 でも俺達は敢えて、その道を素通りし、思い出深い獣道を歩き続けた。 桜花が握る手、あの時と変わらない桜花の手。 握っているととても安心して、落ち着けた。 小さい頃では一時間くらいかかった道のりを、数分で踏破した。 丘の真上に広がる夜空は、満天の星空であった。 昔座ったベンチに腰掛け、夜空を見上げる俺と桜花。 「寒くないか?」 「………少し、寒いかな」 桜花はそう呟くと、俺に身体を寄せ、もたれかかった。 「………あんまり変わらないんじゃないか?」 「ううん、あったかい…………真紅の…………側に居られる………だけで」 桜花の顔を見ると案の定真っ赤だった。 頑張って喋ってたんだな、俺はそう思うと、余計に桜花が愛おしくてたまらなくなった。 「桜花……………」 「……………?」 桜花は微笑んでいる、ほんのりと頬をピンクに染めて…………。 「…………好きだよ、永遠に…………側に居てくれないかな」 俺は心の奥底に溜め込んだ言葉を吐き出した。 カァっと顔が熱くなるのが分かる。 桜花はそんな俺の顔を見て一瞬見つめて、また微笑んだ。 「私も……………真紅の事、好き…………だよ」 見つめ合う俺達、磁石のように惹かれ合い、桜花は目を瞑った。 俺も目を瞑り、顔を近づけて…………… 「お色気てるところわりぃな、貴様の魂貰い受けるぜ」 不意にかけられた言葉に、ムードはぶち壊れた。 後ろを振り向くと、黒い烏のような翼をはやした人間が、大きな鎌を構えていた………。
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