鎌を持ち魂喰らう者

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猫又のクロは死神の鎌を退けた。 凄まじく早い太刀捌き、それは力をも凌駕し、死神を後退させる。 「くっ…………猫又め………《烏》の俺が………猫又なんぞにっ!!」 死神が憤怒する、そして身を翻し、夜の闇へと染まった。 「見ていろ猫又っ!必ず………必ずその魂、喰らってやるからな!!」 夜空から聞こえてきた死神の声は、丘から下の住民地まで響き渡り、その場の空気を凍り付かせた。 が、それも一瞬の事で、単なる夜の静けさに戻っていた。 「本当に………………クロちゃん?」 不思議そうに青年を見つめる桜花。 それを聞くなりクロはニコリと微笑んだ。 「えぇ、覚えて貰えていて嬉しい限りです。…………良く尻尾を掴まれて遊んでいましたね」 そう、コイツ桜花はクロの動く尻尾が好きだった。 持った後も先っちょが忙しなく動く姿がとても気に入っていたらしい。 クロにそう言われると、桜花は顔を俯いてしまった。 「…………ごめんね」 「いえいえ、また掴んで下さい。今は二本に別れていますけどね」 クロはそう言うと俺に背を向けた。 「ん………?じゃあクロ………お前」 「えぇ、濡れおかき………用意していてくださいね?」 変わってなんかいない…………五年前のままだ。 猫又になってもクロはクロ、濡れおかきの好きな変わった俺の飼い猫………。 「あぁ、居間に置いて待ってる。だから…………戻って来いよな」 俺は笑いながらそう言い、クロの背を見送った。 月光に照らされたクロが夜空に飛び、月に映ったシルエットは尻尾が二つに割れた猫だった。
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