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どうやら夢を見ていたらしい、しかも無意識に涙を流していたようだ。
あの時の事を思い出すなんて、俺もどうかしてる…………。
あの日の記憶は頭の奥底にしまい込んでいた筈だからだ。
この家にはもう誰もいない。
俺を引き取ってくれたお婆さんも、飼われていた猫も…………俺を残して死んでしまった。
幼い自分は大泣きした。
もう目の前でもう人が死ぬのは嫌だった。
多分トラウマになっているんだと思う。
小さい頃は本当に良く泣いてた、その度に桜花に慰めてもらってたっけ。
あの大地震から早十一年の歳月が過ぎようとしている今、心の傷は化膿し日に日に悪化しているように思える。
記憶は鮮明に蘇り、人々の叫び声が………あの瓦礫の中に閉じ込められていた時の闇が…………
成長した俺をも蝕むように…………夢に出てはうなされる。
と、そんな時、古い鈴の音が家中に響き渡った。
リンボン、リンボン
家のチャイムは古い、だから正常に動くのは稀で、いつもはああいう風にどもった音になる。
多分桜花が迎えに着てくれたんだと思う。
俺達にも高校生活が始まろうとしていた…………。
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