1章・歪曲した本能

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拓海は裏通りを後にし、街の表通りへと移動した。 つい先程購入したスタンガンは包装もせず、裸のまま尻のポケットに丁寧に詰めてある。 それでも、異様な膨らみはTシャツ程度で隠せるはずもない。そこで薬局の店員から無言で手渡されたチェック柄のブラウスの意味を悟った。腰に巻く事で人々に奇異の視線を送られるのを防ぐ事にしろという事か。 それが的確な判断であるかは解らないが、街を歩く人々の注目を浴びずには済んだ。 拓海にとって問題はここからだ。いざ街中で目当ての少女を見つけても、その場で実行するなど不可能。ならば少女に声をかけ、場所を移した後に実行に移すのか。しかし、やや人間嫌いの傾向がある拓海が街中で女性に声をかけた事など一度としてない。一体どう切り出せば良いのかも当然、解らない。 自分の経験不足を呪いながら、拓海はその案を打ち捨て別の計画を立てることにした。 街中を流れる人の群に沿って歩きつつ、彼は辺りを観察する。日が落ちた後でも学生の姿がちらほら目に留まるが、どれも拓海の求める獲物ではなく、色気を出そうと化粧を派手に塗りたくった女子学生ばかり。拓海の気分は削がれる一方だった。 拓海の理想は色気付き始める前の可憐な少女。暫く歩き続けるも、理想とはかけ離れた中途半端な者達以外を視界に捉えることは出来ず、彼は表通りから離れることに決めた。 そもそもよく考えれば、獲物がその場所にいない事はすぐに解るはずだった。 表通りに並ぶ店と言えば、高級ブティックやヘアサロン、ネイルアートにレストラン。とてもではないが、年端もいかぬ子供が出入りする様な店などひとつとしてない。精々、居ても親同伴で行動する者だけだ。 人混みの中迷子になってしまった少女と遭遇するなど、そうそう起こるはずもない。と、言うより親同伴の少女すらも見かけなかったというのが本音だ。 拓海は内心で舌打ちをして、表通りを後にした。
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