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拓海は奇跡的な出会いに、全身の血が沸騰する感覚がした。
我を忘れそうになるのを冷静にさせるべく、小さく深呼吸をして、脳内をリセットさせる。
幸い、拓海は切り替えの早さと、その際に発揮される研ぎ澄まされた集中力を持っていた。
衝動的な動きを完全に殺す事が出来る。
拓海は目標に気づかれぬ様、息を潜め、ポケットに忍ばせた裸のスタンガンを注意しながらゆっくり取り出す。
すぐ背後に迫ったが少女に気付く気配はない。
彼女はただ退屈そうに足をぶらぶらと振って夜空を見上げている。
この調子なら、難なく成功しそうだ。
その油断は、ピンと張りつめていた緊張の糸を容易く緩めてしまった。
そのすぐ足下。
アルミ製の空き缶が転がっていた。
拓海は、気づかない。
彼はそのまま少女に近づこうとする。
カンッ…
そして蹴飛ばしてしまった。
しまった……ッ!
アルミ製の軽い金属音に反応し、少女は遂に背後を振り返る。
逃げ場所などない。
拓海は焦燥感に駆られながらも、とっさの判断で少女の口元を掌で塞ぎ、一か八か項にスタンガンを当て起動させた。
バチッと音を立ててスパークする。高圧電流が身体に流れた衝撃で、少女は声も上げれずに意識を失い、ガクッと崩れて拓海の肩に寄りかかった。
手袋を装着せず、素手で少女に触れていた拓海は、少女の身体を伝わった電流によって一瞬だけ感電した。
その刺すような痛みに、苦しげな声を微かに漏らす。耐えられる程度の痛みに、拓海はほっと胸を撫で下ろした。
失神しなくて良かった……
と。
当然、計画はこれが終わりではない。
スタンガンを片手で元の位置に戻し、少女を負ぶった。
少女の見た目以上の軽さに、多少驚く。
だがそれよりも、少女に触れているという事の興奮に、口元が綻ぶ。
さらに、力なくうなだれる彼女から、規則的な吐息が拓海の首筋をこそばゆくなぞっている。
拓海の気分は高揚し、男性である部分が、衣服の下から主張を始める。
その悶々とした窮屈な感覚に、目撃者が出ないことを祈り、急いで、自宅へと運んだ。
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