0人が本棚に入れています
本棚に追加
家が近づくに伴い、拓海は待ちきれず足を早めて移動していた。
勢いそのままに家に駆け込み、少女をパイプベッドに転がす。
その後で、部屋の電気をつけ、彼は真っ先に押入を開けた。
その奥に詰められた工具箱。その中からガムテープを取り出す。
まずは、自由を奪うために彼女の手足をガムテープで厳重にぐるぐる巻きにした。
目隠しには自分が睡眠不足に陥っていた時に使用していたアイマスクをそのまま彼女に装着させる。
「…………」
いや、させようとして手が止まった。
常夜灯のぼんやりとしたものでなく、家の明るすぎる照明を浴びた彼女の顔が、余りにも拓海には眩しかった。
少女の素顔の美しさに魅入られ、目隠しをしてしまうのを勿体無いと感じてしまったのだ。
気絶している少女の顔は、無邪気に昼寝をする子供のソレと同じで、寝息を立てて、眠っているように見えた。
たまらず彼女の身体を跨ぎ、少女の顔を正面から見下ろす。
全体的に丸い印象を与える造り。
丸みを帯びた輪郭。
ぷっくりとした鼻…
そして今、拓海の視線は、その下にあるふっくらした唇にあった。
指でつつくと張りがあり、指を押し返す弾力を指先に感じる。
試しに軽く弾いてみるとぷるりと、柔らかく震えた。
拓海は稲妻が走ったような衝撃を受けた。先程の感電など比ではない。
マシュマロにも似た柔らかさ。
本当に人間の肌なのかと疑問を持つ程の感触に、拓海は、何度も何度も彼女の唇と自分の指先を遊ばせた。
その内、彼は我慢ならず自らの唇を重ねた。
指先で触れた時よりも、柔らかく感じた。
包む様な弾力。隙間から漏れる息。
拓海は彼女にもっと触れていたいと、唇を離すことを躊躇い、長時間に渡り唇を重ねる。
それは拓海が初めて、自ら求めたキスであった。
最初のコメントを投稿しよう!