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「んー」
少女は食い入る様にテレビに集中している。
拓海の問い掛けが、ちゃんと耳に届いているか解らぬ生返事だった。
まぁ、多めに作っても損はないか。
そう思い、2人分の食事を作りにかかった。
食事を終えると、少女は風呂をねだった。
拓海は、バスタオルだけを手渡し、その間に食器洗いに取りかかる。
洗い物も終わり、部屋でなにをしようかと考えていると、少女が風呂から上がってきた。
さも、我が家にいるような自然さで、バスタオル一枚だけ身に纏い、真っ先に冷蔵庫へと向かう。
確かに家に着替えはない。
だが羞恥もなく、バスタオル一枚なのは拓海ですら、疑念を持った。
「なんもない」
「ああ、さっき飯作ったからな」
冷蔵庫で風呂上がりの一杯にジュースを探した少女は、空である冷蔵庫に口を尖らせた。
そして、つまらなさそうな顔のまま、拓海の部屋に戻る。
入れ替わりに、拓海も冷蔵庫を確認してみると、ジャムやマーガリン程度しか入っていない。
明日は買い出しか…
溜め息ひとつに、食料も飲料も貯蔵されていない冷蔵庫をバタン、と閉め、少女と同じ様な顔で、自らも部屋に戻った。
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