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「あたし、ゆん。結ぶって書いてゆん。14歳我が儘美少女よろしく」
「…はぁ……」
部屋に戻り、2人並んでテレビを眺めていると、少女は唐突に自己紹介をした。
この場合、どういった返答が模範解答なのか。
拓海は思わず、誰かに問いたくなった。
はっきりと反応に困る拓海。
結と名乗った少女は、笑顔でそれを見つめているだけ。
2人の間に空白の時間が流れる。
「……ちょっと、名前と年齢ぃ」
沈黙に業を煮やし、丸い瞳をやや細めた。
上目遣いに結は拓海の顔を下から覗き込む。
一応、睨んでいるのだが拓海は気付かない。
なにせ、拓海は相手の顔を見てはいない。
拓海の視線は結の顔の直線上にある、まだ発展途上にも関わらず、胸部に出来た谷間部分を捉えていた。
突然の事に、拓海は思わず後ろにのけぞる。
しかし結の言い分も確かではある。
バスタオルを軽く手で押さえながら、拓海の目をじーっと見つめる。
迫力は全くない。
だが、長時間に渡る結の眼差しに負け、拓海は素直に答えた。
「初島拓海…21歳」
「おっけー。しばらくの間、よろしく~」
自分のリクエスト以外に興味のないのか、最後の「い」に被るか被らないかのタイミングで拓海の紹介を挨拶で遮った。
もう大した用はない、とバスタオルを押さえながら、テレビに向き直ろうとする結を拓海が声で制した。
「ちょっと待て。拉致られて緊縛されても顔色ひとつ変えない。自由になったのに逃げない。おまけにしばらくの間よろしくとはどういう事だ」
拓海は体勢を立て直して笑顔の結に詰め寄る。
だが、拓海の言い分は支離滅裂だった。
勿論、結は表情を全く変えず重要な問題にあっけらかんと答える。
「家出少女だもん。これから貴方はあたしの使用人ね」
「使用人!?家主に向かって、使用人!?」
我が儘を通り越して、傲慢で無茶苦茶な発言に拓海は混乱し、家出の下りより使用人として使う気の結に猛抗議を仕掛けようとする。
だが結は拓海の言葉を崩す弱みを握っている。
抗議を聴く気すらなく、結は逆にまくし立てた。
「近隣住民の皆々様や警察の頼もしいおじさん達に、初島拓海は幼女誘拐強姦魔で、SMプレイが大好きなド変態ですって言い触らすよ?」
「……君は俺を脅しているのか?」
「君じゃない。ゆん。若しくは、ゆん様」
「はぁ?!このっ」
結を自分の方に引き込み、自分が馬乗りになるよう、転がした。
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