1章・歪曲した本能

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倒れた勢いで、手が離れ、バサッとバスタオルがはだけ、結の発展途上の幼い果実が露わになってしまう。 拓海は結の手首を掴み、抵抗できぬように、拘束する。 白い肌に張りの出てきた成長途中の膨らみ。 その先端は薄桃色をしていた。 腰部にはまだくびれは出来ておらず、更に下に目をやれば成長がやや遅く、生え始めたばかりの陰毛が見える。 結は覆い被さる拓海を少し驚いた顔で見た。 拓海も結が初めて見せる表情の変化に気分が高揚している。 同様に拓海の半身も反応し、膨らみ始めた。 「……嘗めてると、犯すぞ。マジで」 拓海は結に理想像を重ねたことに後悔すると同時に、理想像でないと解った今。 躊躇いなく、結を汚す事ができるのではないかと考えた。 嫌悪感や恐怖感が表情に浮かべば、拓海は一気にそこを攻めるつもりだ。 全力で抵抗するのなら、それもよし。 最悪もう一度スタンガン気絶させる手もある。 期待する拓海の身体の下で結は、無表情だ。 いける。この調子なら、自分は目的を遂行できると見切った。 しかし、当の結は拓海が無理に動かないのをただの脅しだと見た。 きっと、本気ではない。 拓海の顔からも、結は確信していた。 自分の欲望をぶつける顔には程遠く、拓海はどこか苦しそうに歪めている。 確かに拓海は自分の表情にも気づかぬ程、現状に焦りを感じていた。 今ここで行為に及ぶのは容易い。 結は組み敷かれても抵抗を一向に見せない。 ただ、視線を合わせているだけ。 なのに、身体は緊張に震えている。 何故? 何故動けない? 手首から、拓海の震えは結に伝わる。 何を意地になっているのか。 結は、拓海の震える腕を流し見て思う。 心根は優しいのかもしれない。 視線を戻し、室内照明を遮る拓海の顔をぼぉっと眺めた。 室内にはテレビの音が、少し大きめに明るく流れている。 叫び声をあげなければ、近隣の住人達にも気付かれないだろう。 結は拓海になら、犯されても悲鳴を上げない自信があった。 証拠にいつの間にか全身の力を抜いている。 嫌じゃない。 奇妙な感覚を覚えつつ、動かない拓海をじっと見やる。 すると徐々に、拓海の顔に歪みが増していく。 今にも泣きだしそうだ。 拓海は優位に立っている。 なのに動けない理由は簡単。 拓海は奥底の理性に負けたのだ。 何だか結は悪い事をしている気がした。 だから、 「いいよ」 と微笑んだ。
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