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先程まで涼しかった夜の空気は急に湿り気を帯びた熱風を起こし、2人の身体からじめじめとした汗を流させる。
歩く度に気温が上がっているようにすら拓海は感じ、何度も手の甲で汗を拭う。
それでも恋人らしく絡ませた指を解く気は、お互いになかった。
暗い道中、林、森、民家、所構わず蝉はやかましくミンミンと自らの生きる証を叫び続ける。
毎年彼らはそうやって自らの生命を散らしていく。
きっと彼らの様な真似は平凡な人間には到底成し得ないだろう。
拓海は蝉を疎ましく思う一方、仲間だけでなく世界の人々に生命の全てを以て、存在を主張し続ける彼らをどこかで賞賛していた。
今宵も空に浮かんでいるのは三日月。
夏の熱気に蒸されながら、拓海とあづみは公園を通り過ぎる。
その公園は、拓海が結と出会った場所。
言わば拓海にとって運命を感じた場所だ。
また誰かが結と同じ様にブランコに座っているんじゃないか。
拓海は公園を横目に見たが当然誰の姿もそこにはない。
拓海は目を離し、公園から遠ざかっていく。
帰りの道中、あづみは珍しくあまり拓海と話さなかった。
あづみは、拓海と指を絡ませている事が嬉しくて、拓海が触れている部分を意識してしまい上手く言葉が出ない。
拓海の男にしては細く綺麗な指。
なのに広い肩。
いつか未だ触れた事のない下腹部にも、自分の感触を刻みつけたいと思っていた。
あづみは拓海が思う程、清楚で純な女ではなかった。
ある意味では純とも言えよう。
拓海を想い、自らを慰める事を付き合い出して半年程が経った日から、ほぼ毎夜欠かさず行っている。
拓海に触れている今も、あづみの身体は更に深い場所へと拓海を求め、身体の奥から秘部を濡らす蜜が溢れ、下着をも透けさせてしまいそうな程に濡らしていた。
歩く度、湿った感触があづみを襲う。
手を繋いでいるだけで、こんな状態。
いざ本番の時、自分は行為に及ばぬ間に果ててしまうのではないかと、心配になる程だ。
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