赤い糸

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 私と普通の女の子の違い。それは、誰の小指にもある赤い糸が見える、触れることだった。   「私達ラブラブなんだよぅ!」    そう言って、照れ笑いする男と腕を組んだ友達。小指の赤い糸は、その男と繋がっていなくて、思わず笑ってしまった。    大抵の恋人達は、赤い糸が繋がっていなかった。おかしな子達。そんな人々を見て、こっそり笑う毎日。    なんて惨めなんだろう。けれど私は、あんな奴らとは違う。私には、赤い糸が見えるもの。確かに誰かと繋がっている、私の小指が。ああ、早く会いたい。赤い糸の繋がる、愛しい人に会いたい……。   "それなら、赤い糸を引っ張ってみない?"    私の奥から、声が聞こえてきた。甘く優しいのに、どこが変な感じ。例えるなら、チョコレートと固形のカレールーを間違えたような。それも、チョコレートにしか見えない、とびっきりのカレールー。    最初、赤い糸は引っ張ってもなんだかあんまり手応えがなかった。それどころか、糸だから素手で引っ張ると痛い。不思議だ、人には見えないものなのに。    軍手をしてまた引っ張った。強く、強く、強く。急に引っ張る力が弱くなった。運動会の綱引きで、相手が手を離したように。    私の"彼"が、近づいているんだわ。にやける顔、なんだか恥ずかしい。    少しずつ"彼"が近づいているんだろう。赤い糸も、渦を巻いている。もうすぐ見えるはず、引っ張りやすくなってから二日もたった。    這いずる音を聞いた。    "彼"? 嬉しくて、待てなくて。私は、糸を引っ張りつつ辿って……そうして、見てしまった。    小指を。泥と血で汚れ、ハエのたかる気持ちの悪い、小さな指を! ああ! 私は、こんなものと繋がっていたのか、私はこんなものを求めたわけじゃ、私は、私は!    気づいたら、引っ張った赤い糸で部屋が燃えるように赤かった。な、何よこれ。何なのよ!    慌てて、逃げようとして、足が縺れ、怖くなり、必死で床に手を置き、ああ糸が絡んだ! 泳ぐように、赤い海を出たくて、糸で切れた腕、痛い、痛い痛い痛い!    最後に、糸が私の首を掴んだ。
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