月とすっぽん、すっぽんの恋

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 彼は私を愛している。私も彼を愛している。    けれど私達は、愛しあってはいない。大きな鳥かごの中、彼の愛に包まれていても、満たされない。遠いな、と実感する私の月。   「ここからだして」    彼が顔を歪め、私に行かないで僕が嫌いになったとたくさんの言葉を吐き出した。けれど、彼は私を見ていない。砕け散る音がした。      朝目が覚めて、彼に挨拶をした瞬間に気がつく。鳥かごがあいていた。    そして彼は、昨日まで白かったベッドで静かに突っ伏している。彼はまた遠いところへ行ってしまったのだと、気づいた。    月とすっぽん。彼と私の想いはまさにそれだった。あわないパズルを、無理やりはめようとして曲がったように。そして、もうそのパズルが使えないように、私の恋は静かに終わったのだった。
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