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どうして、このようなことになったのか。
それは、数分前にさかのぼる―――
ラグナとサリカは横に並び、森の中を進んでいた。二人とも地図も持っているはずもなく、ただ勘だけを頼りに進んでいた。
「サリカ、君はお兄さんを探しているって言ってたけど」
話題はサリカの兄の話に変わっていた。
「ええ。私より7つ上の25歳で、変わっていなければ私とそっくりな顔をしているわ! っていってもラグナは記憶ないもんね」
「ごめん、記憶さえあれば……」
しゅんとする、ラグナにサリカが慌てて言う。
「あ、そんなつもりで言ったんじゃなくてね……」
苦笑しながら、なんとかラグナを傷つけまいと次の言葉を探す。
「でも、もしかしたら記憶を失う前に会ったことがあるのかも! なんてねっ、――きゃっ」
喋り終えた途端、何かに躓き思わず声をあげる。
バランスを崩し、前に倒れそうになるサリカの腕を、ラグナが素早く掴んで支える。
「あ、ありがとう」
「うん。それより……君が躓いたソレ、なんだろう? 」
ラグナが不思議そうに見つめるソレをサリカも一歩下がり、足元を改めて見る。
太く茶色いその物体は、色からして石ではなく、また木の枝でもなかった。
ラグナがかがみ、恐る恐る降れてみる。
「ちょ、良く触れるわね……」
「うん、毛がある……なんだか、動物の尻尾みたいだね」
「そんなにデカイ尻尾の動物っていたかしら? 」
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