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「やだやだやだやだぁああ~~!」
そして、今に至る。
確実に近づいている音、ついにその正体が明らかになる。
今にも泣きそうな声をあげながら走る少女に、額に汗を浮かべながらもなんとか走る青年。そのすぐ背後には茶色い獣。
「やっぱりな。ランス、作戦実行だ」
抜き身状態の剣を構え、隣の少年――ランスに声をかける。
「は、はい」
ランスの自身なさげな声を合図にマグナは走り出す。
「そこの二人、巻き込まれたくなかったら左右に避けろ!」
二人――ラグナとサリカは全力で走りながらも、マグナの声を聞き、左右に全力で避ける。
マグナは地面を蹴ると、獣の頭上で剣を振り上げる。そのままを思い切り下に振り落とした。
魔物に剣が当たった瞬間――金属と金属を思い切り叩き合わせた、思わず耳を塞ぎたくなるような音が響く。
「うえぇぇっ、嫌な音~っ」
勢いよく避けたせいか、近くの草むらに突っ込んで葉っぱだらけになった服をパンパンと叩きながら少女――サリカは顔を歪めた。
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