Ⅰ記憶喪失の青年と深い森

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 意識は、戻った。 (うぅ……)  しかし、体が重くて起き上がることが出来ない。まるで、糸で地面に縫い付けられたかのようだ。 (………ここは、森? )  少し重い瞼をうっすらと開けると、上は緑で覆われている。風が通るたびにカサカサと葉を揺らす音が響く。  その緑色は遠くにあるのに、近くに感じるほど深い。 (手を伸ばせば、届きそうだ……)  そう思って、全身に少し力を入れて手を伸ばしてみようと試みる。 「……っ」  結果。たったの5秒で彼の伸ばした右手は、力が抜け、そのまま落ちた。  体が思うように動くようになるまで、彼は眠ることにした。  自分が誰か分からないという疑問を残したまま―― .
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