Ⅰ記憶喪失の青年と深い森

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「気づいたら、ここにいた」 「はあ? 」  そもそも、自分はなぜこんなところに?  思い出そうとするが、なにも思い出せない。いつからここにいたのか、どうやって来たのか。驚くことに、自分が何者なのかさえも全く思い出せなかった。 「それって、記憶喪失ってやつじゃない? 」 「困ったなあ」  思い出そうと必死に真っ白な自分の記憶の中を探ってみる。 ―――ラグナ  一つの言葉が頭によぎる。それが自分に関わりのあることなのかわからないが、取り敢えず呟いてみる。 「ラグナ……」 「へ? 」 「よくわからないけど、頭に浮かんだ」 「ラグナ、貴方の名前かしら?」  そう問われても、イマイチぴんと来ないためそれが自分の名前なのかわからない。 「うーん……」 「まあ、丁度いいわ。思い出すまで、ラグナで良いじゃない」 「あはは、そういうことにしておくかな」 「じゃあ今からラグナって呼ぶわ。ちなみに私はサリカよ、宜しくね! 」 「宜しく、サリカ」 軽く握手を交わすと、少女――サリカが先に話はじめる。 「ラグナは、これからどうするの? 」 「……」  いきなりだったからか、直ぐには答えられなかった。 ――そういえば、何も考えてなかった…… 「どうしようか……」 「何も考えてなかったのね……」  暫しの沈黙。 「……そうだ! 」  その沈黙をきるように、サリカが大きな声で言った。 「私と、一緒に旅しない? 」 .
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