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「気づいたら、ここにいた」
「はあ? 」
そもそも、自分はなぜこんなところに?
思い出そうとするが、なにも思い出せない。いつからここにいたのか、どうやって来たのか。驚くことに、自分が何者なのかさえも全く思い出せなかった。
「それって、記憶喪失ってやつじゃない? 」
「困ったなあ」
思い出そうと必死に真っ白な自分の記憶の中を探ってみる。
―――ラグナ
一つの言葉が頭によぎる。それが自分に関わりのあることなのかわからないが、取り敢えず呟いてみる。
「ラグナ……」
「へ? 」
「よくわからないけど、頭に浮かんだ」
「ラグナ、貴方の名前かしら?」
そう問われても、イマイチぴんと来ないためそれが自分の名前なのかわからない。
「うーん……」
「まあ、丁度いいわ。思い出すまで、ラグナで良いじゃない」
「あはは、そういうことにしておくかな」
「じゃあ今からラグナって呼ぶわ。ちなみに私はサリカよ、宜しくね! 」
「宜しく、サリカ」
軽く握手を交わすと、少女――サリカが先に話はじめる。
「ラグナは、これからどうするの? 」
「……」
いきなりだったからか、直ぐには答えられなかった。
――そういえば、何も考えてなかった……
「どうしようか……」
「何も考えてなかったのね……」
暫しの沈黙。
「……そうだ! 」
その沈黙をきるように、サリカが大きな声で言った。
「私と、一緒に旅しない? 」
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