Ⅰ記憶喪失の青年と深い森

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「……旅? 」 「私、兄を探す旅をしてるの。 ラグナ、貴方記憶が無いっていってたでしょ? どうせ行く宛ないなら私と旅して、その記憶を探してみない? 」 「……」  考えてみる。自分が一体、何者なのか。 なぜ、このような場所で倒れていたのか。 自分に、一体何があったのか。  たしかに、この先のことを考えてはいなかった。  記憶がないとそれだけで不安になる。頼るものが全くないのだ。  そう考えると、この少女に着いて様々な場所へ行ってみれば、記憶が戻るかもしれない。  しかも、改めて自分の周りや格好を見る。ズボンのポケットに手を入れて探ってみるが、なにもない。つまり一文なしだ。  少し、考えた後、ラグナは口を開いた。。 「うん。サリカ、君と一緒に旅することにするよ」  この深い深い森の中。  それが、僕らが初めて出会った場所。  二人の旅の始まり。  そして、この冒険記に書かれる最初の記録。 .
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