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「…と、いうワケなのデス~」
自分の旅のきっかけと諸々を話し終え、ニコッと笑っておどけてみせる驢だったが女はきつい視線を下に落としたままだ。
「……」
「ちょっ、アレ?…も~。わかったよ。ふざけるのやめるからさぁ」
「『やめるから』なんだ」
「…へっ!?いやあの、そんな事言われても困るっていうか何というか…」
女の氷のような鬼のような返答に、驢は
これが世に聞く「氷鬼」かぁ…
と納得してしまったほどである。
「あ!そうだ!じゃあ自己紹介してくれな…」
「断る」
即答の拒否で会話は終了…。
「……」
「…………」
「……………(沈黙がビシビシ痛いなぁ)」
驢の痛みを無視して、それでも女は黙り続けている。
猛虎の口に飛び込むぐらいの決心をして、ようやく少年が口を開いた。
「…あの、なんでダメなんですか…?」
「貴様には必要も関係も無い事だからだ」
そ…そんなストレートに言わなくても…
驢の心の声が聞こえているのかいないのか、女は続けた。
「用が無くなったら立ち去れ。もし私と貴様の間の、何らかの関係を示す証拠でもあるなら話す」
「う…」
ちくしょートカイジンは冷てーな!!なんだトカイジンって!!
驢は心の中でけなしたが、一つ名案が思いついたのとリンゴをくれたおばさんの親切さを思い出したのとで自らを落ち着けた。
「あの~…ちょっといいかな、お願いが」
「貴様の旅には同行しないぞ」
「…あ、…え?」
なんで分かるのぉぉー!?
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