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「…なぜ知っているんだ」
「だってボク聞いてたから。キルーと君のおしゃべり」
アレをなぜおしゃべりと呼べるんだよ…
心の中のツッコミはさておき、問題は…
「僕の話を聞いてたのは…変身して?」
「うん、そーだよ。猫なら狭いところに隠れられるし、街中には天敵もいないからね」
「そんな…なぜ聞いたり…」
「おい坊主ども!!おしゃべりはそこまでだぜぇ…」
盗賊達の頭らしきごつい男がガラガラ声で遮った。
「これから楽しい楽しい、血みどろのショータイムが始まるってのによぉ…。もう待ちきれねーなぁ…」
ヤバい。冷や汗が驢にそう告げた。
逃げろ。
逃げるんだ!
…しかし体は動かない。
「山ン中じゃあ世話になったなぁ坊主…。今度こそぁ勇者様をもっとたくさんの仲間で歓迎してやらねーとなぁ…」
なぜだ。野宿しているような少年だ。金品を狙うのには無理がありすぎる。
そしてなぜ、血みどろにされなくちゃいけないんだ!!
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「があぁぁぁぁぁぁ!!」
気がつくと、盗賊達と同時に走っていた。
驢は運動神経が良い。それに一年間だけ軍隊にとられた兄に、剣も習った。
何もしなければどうせ死ぬんだ。迷ってなんかいられるか!!
輝く真新しい洋剣をすらりと抜く。
キンッ!!ザッ!ザシュン!!ギィン!
刃と刃がぶつかり合い、火花が飛ぶ。いや、それは血だろうか。
「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何も分からなくなって、ただひたすら雄叫びを上げ、剣を振るう。
肩や太ももにつんざくような痛みが走ったようだが気のせいだろう。
顔や茶色の髪に火花が降りかかったようだが気のせいだろう。
しかし、1対多数。簡単に勝てるわけがない。
意識を取り戻した頃には、隅で囲まれていた。
疲れきり血みどろになって荒い息を吐きながら、それでも剣を構えてよろけ立つ少年。
その少年の首に刃を当てる盗賊。
二人を囲む、大勢の手下たち。
もう勝負は決している。なのになかなかとどめをささない。
「ぐっ!…はぁっ、はぁっ…な、なぜなんだ…」
「あぁん?わーったよ。死にてぇなら殺してやらぁ…」
首から刃が離され、勢いをつけて空を滑り出す。
驢は目をつぶった。
ごめんなさい。母さん、兄さん、銀林。
命が助かるチャンスをなげうって、僕を助けてくれたのに…!!
雄叫びが聞こえる。
ああ僕…もう死ぬのか。
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