ヤン

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店の中にリンゴをかじるシャクシャクという音が響く。 あの後、二人はおばさんから鉄拳とリンゴをもらって椅子に座っていたのだ。 「…ったく!ケンカはダメよ、姉弟なんだから」 「………!?グホッ!」 おばさんの勘違いに、二人は同時に喉を詰まらせた。 「あらやだ!どこまで仲良し姉弟なんだか」 おばさんは笑いながら二人の背中をドンッと叩く。するとたちまち詰まっていたリンゴが取れ、二人はなんとか命拾いした。 「お…おばさん。こんなヤツなんかと姉弟だったら身が保ちませんよ!」 「なんだと…貴様のような甘っちょろ…」 ゴツン!! 後ろからおばさんの鉄拳が飛んできた。二人とも頭を抱えてうずくまる――と思いきやキルーは鮮やかな身(上半身)のこなしでよけ、結局驢だけがゲンコツを食らった。 「――――っ!」 「ケンカはダメ!」 二人はギッとにらみ合う。 「ところで…おばさん、すみませんが図書館への道をもう一度教えてくれませんか?今度は地図つきで」 「あら、たどり着けなかったのかい!?」 「ごめんなさい…方向音痴なもので」 おばさんはクスッと笑うと、 「じゃあ今から送って行こうか」 と言ってくれた。 もちろん驢は遠慮したが、おばさんは店番を息子に任せるからと言って豪快に笑った。 帰り道、彼は本の内容をメモした紙を、もう一度読んでいた。 「ドラゴンと龍は異種である。しかしながら七色の伝説は両者とも同じ。紅ならば治癒能力、蒼ならば武器になる牙…」 ここまで読んで、ふぅっと息を吐く。 「紅き龍たちは"祈り苔の洞窟"内部のどこかに眠っている。今まで何千人もの旅人が目指したが、そのうち生きて帰ってきた者は十数人。 その全員が、口を揃えて言う。"龍に質問された、内容は覚えていない。自分も仲間たちも普通に答えたのに気がついたら自分だけ鱗を持って洞窟の外に立っていた。仲間の行方は今も知れない…」 空を見上げる。 「なぜ…?その人たちは今も洞窟にいるのだろうか。それに、なぜこれしか文献が残っていないのだろう…」 つーか… 驢は今ふと思い出してムカッときていた。 キルーの奴…「私には関係ない」とか言ってさっさと次の町へ行ってしまった。 まぁ、もう会いたくなんかないし、別に良いんだけどさー。 ……僕も買い物したらそろそろ行くか。
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