プロローグ

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若い侍は振り向き様に足が何かに引っかかった。 何にぶつかったのか、確認する前に泣き声が聞こえてきた。 足元を見ると、5・6歳くらいの男の子が泣いていた。 「だから、前を見ろと言っただろう。」 男の子を立たせながら、男が言った。 「すみません。」 誤ったのは見たことのないような綺麗な女だった。腕には生まれて間もないであろう赤子が、大切に抱かれていた。 「い…いえ、こちらこそ。」 侍は女に見とれながら、頭をかいた。 領主は、一家をじろりと一別し不機嫌に急かした。 「早くしろ!!!」 人が困っているのに幸せそうにしおって――と、あからさまに不満な態度で立ち去った。 まさか、女の腕に抱かれているのが先日山に捨ててきた赤子だと、気付きもせずに―――
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