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しばらくして夢蒔は椅子一つ分、横にずれた。
ベンチにはもともと座れるスペースがあったけれど、そんな仕草で"となりどうぞ"を促す配慮がとても良かった。
私は隠していた太陽を再び空に返して、夢蒔のとなりに座った。
夕方でもないのに空がピンクに見えて、頭のなかでピンクのフラミンゴが踊っている。
私は誰かと座るとき向かい合って座るより横に並んで座る方が好きだ。
向かい合うと妙に相手の視線を意識して目の置き場に困ることがある。
変に意識して歯車がかみ合わなくなる感じ。
だからこうやって並んで座って、景色やブラブラ所在なく揺れる自分の足を見ながら話すのが好きだった。
夢蒔の手が目に映る。
無造作に置かれた手の甲に龍が這うような血管が浮いている。
それと共に形作る骨との組み合わせが心に響いて子宮に運ばれていく。
キュンという振動が通過していく。
「君、名前なんていうの」
不意に夢蒔がのぞき込むように言った。
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