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あんな彼女を見て、誰があんな振られ方をしたなんて…予想できるだろう。
どちらかと言えば、振られる方ではなく振る方な気がしてならないのは、俺だけだろうか…。
───…しかし、“これ”はなんだろうか。
俺は右手を、自分の胸にそっと当てる。
そこは服の上からだと微かに分かる程度だが、脈打っていた。
さっきの場面に遭遇したときだって、こんな症状は出なかった。
彼女の顔を見た数分後の出来事。
それが意味すること───簡単なことだが、理解するにはその意味は重すぎた。
簡単だからこそ、見逃せてしまうのではないかと勝手に思い込み始めた。
だって何も知らないんだ。
知っているのは彼女の苗字だけ。
そんな相手に、今の俺の状況はあり得ないの一言で片付けることも可能だ。
部長を待たせているから、という理由で片付けることも可能───
「部長ーーーっ!!」
自分の胸の異変に、忘れていたことを俺はそこでようやく思い出した。
一人になった倉庫で叫んでも気にならないほど、俺は部長を待たせている可能性を思い出してテンパり始めた。
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