忘れられない

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部長はそう言うとため息を吐き、手に持っていた書類を俺に渡し 「焦らなくていいから、自分に任された仕事をきちんとこなせるようになれ。最近お前の仕事は、荒さが目に付く。いい加減な仕事をして、得られるものなんて何もないぞ。信頼を失うだけだ…イコール任される仕事が減るってことだ」 それは困ると部長に指摘されたことを改善しようと心がけ始めると、大きなミスは減ったので今まで以上の仕事を任されるのではないか思っていたが、それはあっさりと裏切られた。 それはただの“傲り”だ、と言われても仕方がないのだが、ミケに勝ちたいという思いはそれを気付かせることを邪魔していて、気付いてからもそれは違うと否定させる。 そしてそれは起こってしまった。 「あれ?…おい、ミケ」 「なんだよ、用件は手短にな」 「ここに置いてた書類知らねぇか?どこ探してもねぇーんだ」 「知らねぇー」 何気ない、いつもと同じような返しだったのにその時の俺は、とくに関心を示さない態度に苛立ちを覚えた。 大事な書類を無くしたかもしれないという不安から、その苛立ちはすぐには治まらない。 .
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