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俺は近くにあった少し丈夫そうな段ボールに、腰を下ろし辺りを見渡す。
この部屋は六畳ほどの部屋が四つドアと壁で仕切られ、くっ付いたような形をしている。
俺は今廊下に一番近い入口の近くの部屋にいて、入口に向かって座ってるんだけれど、俺から見て右側の部屋からなんだか声がする。
はっきりとは聞こえないが一人…いや、二人の声が聞こえてくる。
「俺以外にも、ここを利用する奴…まだいたんだな」
なんて少し残念そうに独り言を言えば、聞こえていた声が次第に怒鳴り声のように変わっていく感じがした。
俺は興味本意で、声のする部屋に近づく。
『……ダメなんだ…』
『………して……?』
耳を澄まして、会話を聞き取ろうとしたが上手く聞き取れず、なんとなく男女の声のような気がした。
『……おれは……』
『……できない…』
この歯痒い会話に俺は、なんだか全貌が知りたくなって、できるだけ音を立てないようにドアを開ける。
『もう無理なんだよ…』
『だからどうしてよ…』
女の方は泣いてしまっているのか、微かにすすり泣きが聞こえる。
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