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「だから、これで…終わりにしよう。お互いのために…」
そう男が言うとその場には、女のすすり泣く声だけが響く。
「それじゃ、俺は仕事に戻るから…お前もできるだけ、早く仕事に戻れよ?」
男のその言葉に、女は何も言い返さない。…返せないと言うのが正しいのかもしれない。
そのまま俺は足音が向かっていることに気付き、慌てて倉庫を飛び出した。
近くの廊下の角から倉庫の入り口を見張っていれば、少しして男が一人出てきた。
俺は男の正体に、正直驚いた。
とくに話したことがあるわけではないが、会社の中では少し名の知れた男だ。
それは仕事が出来るという面でも、女に関してもだ。
そんな男に、あんなことを言わせる女って一体、どんな女なんだ。
スゴく気になった俺は、じっとなんてしていられなかった。
だから俺は、男の姿が見えなくなってからまた倉庫の中へと戻った。
入った部屋は、何事もなかったかのように静かだった。
しかし、もう一枚ドアを開けばそこは──…
「──っ…くっ…ふっ…うっ…」
…今あったことを俺に分からせるには十分なほど、女の悲痛な思いで満ちていた。
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