忘れられない

9/17
前へ
/31ページ
次へ
俺は…──どうすればいい? 彼女をこのまま、慰めた方がいいのだろうか。 それとも何もせずに、このまま彼女が離れるのを待つべきなのだろうか。 そうなれば…──俺は仕事に戻れないということになり、結果的に俺は損をすることになる。 ──…部長も、コピー用紙待ってるだろうしな。 そんなことを考えていれば、彼女はゆっくり俺から離れる。 どうするのかと様子を伺っていれば、彼女は視線を合わせることもなく 「…ごめんなさい、そこを退いてもらえますか?」 また少し俯いたままそう言ってくる。 俺は彼女に言われた通り、そこを退き道を空ける。 「ありがとうございます…」 彼女は軽くお辞儀し、俺の前を通り過ぎて行く。 ──…まっ…… 通り過ぎて行く瞬間、俺は軽く口を開き…そう呟きそうになった。 言う勇気も言う理由もないため、それは言葉にはならなかった。 彼女の後ろ姿に、俺は驚いた。 ──…立ち直りの早いヤツだな。 胸を張るように背筋をピンと伸ばし、真っ直ぐ歩くその姿に俺はそう心の中で呟いた。 .
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加