第十二章 存在理由

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   一太刀。ラミアスから放たれたその斬撃は確かにガードした。にも関わらず、無惨に大地に横たわる己れにレイスはただ唖然とせざるを得なかった。  無論、ラミアスの強さは知っている。だがまさか……これほど迄に力の差は歴然だったというのか?  たった一度、剣を交えただけで大地に這いつくばらされた。しかも敵は本気を出してすらいない。恐らくコテ調べ程度の斬撃だったのだ。 「まだ……だ!」  それでもウィクトリアを地面に突き刺し、息をあがらせながらも立ち上がるレイス。それにラミアスは淡々と言い放った。 「まだ立つかアビスナイト。やめておけ。今のお前では私に触れる事すら出来はしない」 「俺はここで退く訳にいかない!」  そんな言葉に動じる事もなく、レイスは再びラミアスに向かう。魔光を最大まで解放しウィクトリアに炎を収束させる。  そして己れの全てを込め、レイスはかつてない程の高速の振り下ろしを放つ。それは紅き閃光となりただ目標に向かう。 「炎魔聖光剣!」  凄まじい爆音と共に二人は黒煙に包まれた。だが辺りに吹き荒れる轟風がそれを吹き飛ばし、視界は直ぐに戻る。 「なん……だと?」  しかし目の前の光景にレイスは絶望した。右腕一本でウィクトリアを掴み取るラミアスの姿があったのだから。 「この技……どこかで……」  そんな中、ラミアスは驚愕の表情を浮かべていた。確かに覚えのある技。そんなラミアスの中に一人の男の姿が思い浮かぶ。  それはレイスと同じ黒髪に黒い瞳。かつてラミアスと唯一渡り合ったといえる伝説のアビスナイト。ジーク=アルファードの姿だった。  そしてラミアスは直ぐに結論に至る。七年前の復讐という言葉。黒髪と黒い瞳という共通点。そして同じ技。 「そうか……あの時の少年か……」  
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