第十二章 存在理由

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   自分の存在理由……。そんなもの、迷う必要はない。迷う筈がないのに。レイスは暫し沈黙した。  そんな自分に急に嫌気がさしたのか。レイスは全ての雑念を再び振り払うように、ウィクトリアを一度振るいラミアスに向ける。 「俺の存在理由……それは貴様を殺す事。憤怒、憎しみ、それこそが俺の全て。他には何も望みはしない! 貴様さえ殺せればな!!」  そんなレイスを静かに見据えたラミアスは、どこか儚く哀しげな表情を浮かべた後、ゆっくりと己れの魔光器を抜き放った。 光輝く長剣の魔光器  七年前と何ひとつ変わらない。いや……この魔光器には今は名がある。  聖光剣セルヴィエスタ  それがこの魔光器の名。それをゆっくりと構えたラミアスは言った。 「私の死で、あの時の罪が払われるのなら私はこの命を差し出そう。だが、今は死ぬ訳にはいかない。神を滅ぼすその時まで」 「黙れ!!」  砲哮と共にレイスは駆け出していた。それを向かえ討つように、ラミアスも臨戦体制に入る。 「それでも今すぐ私を殺すなら、私も自分を守る為に戦わざるを得ない。それが私の存在理由なのだから」  鈍い音と共に重なり合う互いの魔光器。しかし力の差は歴然だった。全力を込めたにも関わらず。  それでもレイスはたったの一撃で紙切れの如く空に舞った。そのまま重力に従うまま大地に叩きつけられ、視界いっぱいに空が広がる中、レイスは茫然とした。 (……ばか……な……)  
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