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† † † † † † †
イージス大陸
大陸全体が雪に覆われた白銀の世界であるこの地に、絶望と共に崩壊していくひとつの街があった。
街並みは紅く染まり
空にはまるでこの絶望を現すかのような暗く深い暗雲が立ち込めている。
辺りに無数に散らばる人々の死骸。
その全てから流れ出る鮮血の紅が、静かに大地を染めていた。
「アルダさん……ガルシアさん……」
そんな町の中央
黒髪と黒い瞳を携えた少年が、無惨にも何かに斬り殺された二つの亡骸を見据え、全身を震わせながら呆然と立ち尽くしていた。
近くに佇むのは背まで流れる銀色の髪と、冷たく輝く金色の瞳を持つ男だった。
全身には返り血で所々が紅く染まった白いボロボロの布を羽織り、その左手には刀身が凄まじく長い、光輝く長剣が握られていた。
「大したものだ……。その体でまだ抗うのか」
長剣から紅い液体を垂らし、銀髪の男が静かに冷たい言葉を放つ。
その氷のような視線の先には、少年と同じ、黒髪と黒い瞳を携えた騎士が意識を朦朧とさせながら立っていた。
「終わらないさ……俺にはまだ、守るべき者がある」
黒髪の騎士は少年を守るように銀髪の男の前に立ちはだかった。
対して銀髪の男は、全身を震わせている少年に視線を移す。
「守るべき者……」
「お前には、永遠に理解出来ぬものだ!!」
咆哮と共に剣を振りかぶった黒髪の騎士は真っ直ぐに銀髪の男へと向かって行く。少年にとって、その時の光景はまるで時間が壊れてしまったかのように、余りにも静かに流れていた。
「父、さん……」
少年は不意に呟いた。
しかし少年の言葉も虚しく、彼らの剣は鈍い音と共に重なった。
「すまない……レイス……」
少年に対して、静かに謝る黒髪の騎士。
そこで少年の意識は闇に沈んだ。
まるで少年自身がこの先を拒むように、自然と視界は暗転し、少年の絶望の記憶は幕を閉じた。
† † † † † † †
プロローグ【完】
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