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幸せそうに笑う君が好き。
その熱を熱いと捉えるでもなく、寒さの中で無意識に熱を求めるように隣へと座った。
それがそれであったことは単なる偶然。
熱を感じられるなら何でも良かった。
それは向こうも同じだったようで。
時折、視線を感じて顔を向けても、相手はまた違う方を向いている。
だから、と別に視線を向けると、また興味深げな視線を浴びせられる。
重ならない。
思えば、不思議な事。
隣に座るのは偶然でも有り得るのに、視線を合わせるには別の何かが必要らしい。
そこまで無意識で出来るほど、世の中は便利に出来ていない。
手繰り寄せるのは自分。
偶然が用意してくれるのは、ここまで。
冷たいんだか、優しいんだか分からない偶然に後押され、ギュッと手を伸ばして掴んでみた。
突然にハッとした瞳が、こっちを見る。
隣に座るまでは偶然。
それから先は――――。
向けられた視線が不意に下を向く。
そして、偶然だったことが、必然に変わった。
熱を感じられれば良かったのは昔の話。
今はこの笑顔だけが幸せ。
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