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「取り…乱しちゃ……って…
ごめん……なさい…」
涙を複の裾でふき、再び大きな瞳をアイバーに向ける。
さっきと目を合わせた時と違うのは妻の赤らんだ顔と充血した目だった。
「私を……自由に……ヒック
して……くだ…ヒック…さい」
声をもらすとまた涙が溢れてくる。
ヒックヒックと妻の泣き声が部屋に響き渡った。
言葉を出さないアイバーを見て、妻は座る体勢を素早く変える。
そして額を床にくっつけ、手は頭の前にペタンとつけてた。
俗に言う、土下座だ。
「おねが……しま…ヒック」
アイバーは息を飲んだ。
土下座なんてめったにするものではない。
そこまでして、別れたいなんて…。
俺ってそこまで酷い男?
胸がキリリと痛んだ。
しかし不思議と声は出ない、体も硬直したままだった。
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