3人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやッ!!離してッ!!」
悲鳴に似たデビルの泣き声が響き、アイバーは正気に戻った。
黙ったまま腕の力を弱めていく。
そして全て力を抜いた手はプランと体の横に戻ってきた。
「もぅ…無理なのよ……」
妻がそう呟くと、手でアイバーの体を押しゆっくりと体を離した。
すくりと立ち上がった妻は左手の薬指に目を向ける。
そして、シルバーの指輪をはずすと机の上においた。
「実家に帰らせてもらいます…
離婚届は送るから…」
「ぁ……」
妻のアイバーの返事を聞く事も無くトタトタと、リビングから出て行く。
追いかけろ…。
ドゥヤッテ?
まだ間に合うだろう?
ナニヲ?
このままで良いのか?
イイワケナイ
だったら追いかけろ
オイカケテカワルシンジツナノカ?
…──ガチャリ
重い扉が閉まる音が響いた。
これは妻が行ってしまった事を意味する。
妻と自分の間には大きな門があって、それが永久に開かない様な音だった。
そうだ…。
彼女と自分の間には大きな門が出来てしまった。
俺は気付くべきだったんだ…。
でも、もぅ遅かった…。
閉まってしまった門に気付いても、もぅ遅い。
二度と開く事は無い。
最初のコメントを投稿しよう!