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「うぅ……」
開く事の無い門の前で、泣いている自分が脳にうつる。
どれだけ叩いても、どれだけ叫んでも開かない門。
「うぅ……あぁ……」
自分では思えない程の奇妙な声がする。
これは本当に自分の声なのか?
自分はこんな奇妙な声で泣くのか?
アイバーは机にある指輪を握りしめた。
まだ妻のぬくもりが残っている。
「…デビ…る……」
精一杯の声で妻の名前を呼ぶ。
しかし、当たり前で妻の返事は返って来ない。
「デビル……デビル……
デビル……デビルッ!!」
鼻をすする音と奇妙な声が自分を包んでいる。
あの優しい笑顔が見たい。
あの優しい声が聞きたい。
あの笑った顔が見たい。
あの怒って頬を膨らましている顔も見たい。
泣いていても良い……。
俺がなぐさめるから…。
だから…戻ってきてくれ…。
「ふ…ぇ…デビル…
デビルぅ……」
俺は明け方まで泣き崩れた。
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