第3章

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空港に降り立つと、平日なこともあり人は疎らでどちらかというと静かだった。 時計を見ると午後4時半を少し過ぎていた。 実家の両親は二人とも働いているので、直接空港まで迎えには来られない。 ただタクシーで帰ると片道5000円以上かかるので、最寄の駅まで迎えに来てもらうよう飛行機に乗る前に母にメールしておいた。 空港を出ようとドアが開いた瞬間、冷蔵庫の中のようなひんやりと冷たい空気にさらされる。 「寒っ…」 コートの襟で顔を寒さから庇いながら、タクシー乗り場へと向かう。 数珠繋ぎのように並んだタクシーを見て、結局どこも同じ景色に淘汰されていくんだな…と感じた。 私は一番前にいたタクシーに鞄ごと乗り込んだ。 「どちらまで」 「帯広駅まで、お願いします」 「かしこまりました」 運転手がゆっくりと車を出した。
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