二章

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「それから……悲鳴。火の手が上がって、人の血が……。たぶんそれが愚りた時のことだと思う」 「それだけか?」 「それだけ」 「ふむ」 水の音が跳ねる。 時由は少しの間考えると、口を開いた。 「これで一つ確定した」 間を置く。水音一つ。 「神は人間が愚ろした。そしてそれはおそらく……、」 水音二つ。 「藤原康則」 「藤原康則」 二人の声がそろう。 時由はニッと口角を上げた。 「敵が見えてくれば崩すのは簡単だ」 「確証はないけどね」 「不審な人間が一人しか居ないのなら、そいつに間違いないだろ」 ぴしゃり、水音が跳ね上がる。 夏の日が、水に揺れる。 蝉がジジ…っと鳴く。   ∞  ∞  ∞ ぴしゃり、水音が跳ね上がる。 夏の日が、水に揺れる。 蝉がジジ…っと鳴く。 一人の童子が、一条戻橋に腰をおろし、ほくそ笑む。 それからふわりと堀川の上に降り立った。 凛。 と空気が一鳴りし、童子はつま先で水面に立つ。 「さぁ、始めようか、主様」 子供特有の幼い声が口から滑り出る。 それは歌を紡ぐように、高く、滑らかに。 第二章   完
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