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何を言っているのか分からない私に、先生は穏やかに目を細めた。
「秘密基地は……その内どうしてこんなの作ったんだろうって思わない?その時は夢中になって作り上げるのに、完成して時間が経つと興味が薄れていく」
「……?それは、成長するからですか?」
「うん。そしていつかその秘密基地のことも忘れちゃうんだ。あんなに大事にしていた場所なのに……大好きな場所だったのに、ね」
分からない。
頭が混乱してくる。
「まだ理解できない?咲良君はそのつもりだったんだ。一人で過ごせない"秘密基地"ならいらない。他人が入るくらいなら壊れてしまえって思ってたんだよ」
「はぁ……」
「そんな彼が、初めて受け入れたんだ。君と……葉月ちゃんとなら壊さなくていいって思ったんだよ」
頑なに拒んで、自分のテリトリーには絶対に近付けなかったのに。
急な"邪魔者"によってあっさり奪われた、一人だけの秘密基地。
「咲良君は、邪魔者であったはずの君と関わりたいと思った……なぜだか分かる?」
「あ……えと」
「君が彼を信じてたからだよ。真っ直ぐに純粋に……君が彼を待ち続けていたからだ」
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