1547人が本棚に入れています
本棚に追加
深く溜め息をつき、あしらった手を引っ込める。
「ふ~ん。じゃあ帰ってあげるよ。ま、明日の朝起こしてあげるけどね」
「はいはい」
佐倉はドアに向かう。
これでやっと静かになれる。
「……咲良」
「まだ居たのか」
――あれ?
今こいつ呼び捨てにしたか?
「今日も屋上行かないの?」
「はぁ?こんな雨なのに行くわけないだろ」
雨はどんどん激しくなって、もう視界はほとんど見えない。
「そうだねぇ~こんな雨だよね~誰も外に出たがらないよね~」
「……何が言いたいわけ」
「こんな雨でもさぁ。少女Aはいるわけよ」
「――……」
「なっかなか来ない誰かさんを待ってさぁ。けなげに屋上にいるんだよ今日も」
「まさか…この雨の中いるわけないだろ。それに、あんなよく分からない子」
「だから放っておくんだ」
言葉に詰まる。
「咲良にとっては何の関係もない他人だもんね~当たり前だよね」
「……そうだよ」
知らない。
あんなやつ。
勝手に人を待って、勝手に行動しているだけだ。
俺のせいじゃない。
「俺にも関係ないけどね~ちょっと耳にいれとこうと思っただけぇ。じゃあねぇ~」
ひらひらと手を降りながら、佐倉は病室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!