春~始まり~

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深く溜め息をつき、あしらった手を引っ込める。 「ふ~ん。じゃあ帰ってあげるよ。ま、明日の朝起こしてあげるけどね」 「はいはい」 佐倉はドアに向かう。 これでやっと静かになれる。 「……咲良」 「まだ居たのか」 ――あれ? 今こいつ呼び捨てにしたか? 「今日も屋上行かないの?」 「はぁ?こんな雨なのに行くわけないだろ」 雨はどんどん激しくなって、もう視界はほとんど見えない。 「そうだねぇ~こんな雨だよね~誰も外に出たがらないよね~」 「……何が言いたいわけ」 「こんな雨でもさぁ。少女Aはいるわけよ」 「――……」 「なっかなか来ない誰かさんを待ってさぁ。けなげに屋上にいるんだよ今日も」 「まさか…この雨の中いるわけないだろ。それに、あんなよく分からない子」 「だから放っておくんだ」 言葉に詰まる。 「咲良にとっては何の関係もない他人だもんね~当たり前だよね」 「……そうだよ」 知らない。 あんなやつ。 勝手に人を待って、勝手に行動しているだけだ。 俺のせいじゃない。 「俺にも関係ないけどね~ちょっと耳にいれとこうと思っただけぇ。じゃあねぇ~」 ひらひらと手を降りながら、佐倉は病室を後にした。
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