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ザァ―――…
佐倉が病室を出てから、咲良はずっと窓の外を眺めていた。
激しい雨が強さを増し、激しく窓を叩く。
「何だよ……少女Aって……」
なんでこんなに俺が考えなきゃいけないんだ。
『あなたも……同じ』
(……知らない)
知らない、あんな奴
「出てくるなよ……っ」
意味が分からない。
あんたが俺の何を知っている?
同じだって、どうして決めつける?
自分は名乗りもしないくせに
本ばかり見て
あれから一度も俺を見ないくせに
なのに
「待ってるとか……」
勝手に現れて
勝手に名前を呼んで
本当に訳が分からない
―――だけど
『咲良…見つけた』
あの澄んだ黒い瞳が、ずっと頭から離れなかった。
「くそ……っ」
咲良は病室の扉を乱暴に開ける。
少し重い手足に鞭打ち、彼女が待っているだろう屋上へ向かった。
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