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「もう少し……」
カウントダウン。
彼女はそうしてるかのようだった。
「咲良……あと少し」
「……え」
彼女が俺を見てそう告げた瞬間、俺達の周りを激しい突風が吹き荒れた。
「わ………っ!!」
あまりに強い風に俺は目を開けられない。
「あっ……」
その衝撃は凄まじく、彼女の白い傘が空高く飛ばされていってしまった。
「傘……ねぇ」
彼女も驚いているだろうと思い、呼びかけるが
「………?」
彼女はある方向を指差したまま答えない。
「咲良……見て」
言われるままにその方向に目を向ける。
「………っ!?」
言葉が出ないとは、きっとこのことを言うのだろう。
木々についた雨の雫に、夕焼けの茜色が反射して
「う……わ……っ」
まるで宝石を散りばめたように煌めいていた。
「すごい……」
いつもの屋上から見える景色なのに、今はこんなにも美しいなんて。
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