巡る季節~言の葉~

17/25
1547人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
優しい口調で言い放つ先生の言葉に、何を言えばいいのか困ってしまう。 「私……は」 そんな大層なことはしていないのに。 ただ自分が望んだまま、しただけだ。 「……壊れていいんだ」 ぽつりとこぼれた声に反応する。 「それだけ仲間を、居場所を見つけられて成長できた証だから……壊してもいいんだよ」 「……頭が痛いです」 難し過ぎて、理解が困難で―――だけど。 「先生……?」 「ん?」 「少しは……自惚れてもいいんですかね」 邪魔者だった自分の存在を、彼は受け入れてくれたのだと。 少しは、必要としてくれたのだと。 「自惚れるも何も、事実じゃない」 あっさりと答えをくれる先生が、笑う。 「……何に悩んでるか知らないけどさ」 いつの間にか綺麗に食べ終わった定食を前に、丁寧に手を合わせた。 「誰かを傷付けてでも、やらなきゃいけないこともあるよ」 「―――っ」 淡々と、当たり前のように言う。 やっぱり、あなたにはすぐ分かってしまうんだ。 「葉月ちゃんが正しいと思った答えを言えばいいと思うよ。それはきっと、間違ってないから」 言葉と合わず、悪戯を考えた子供のように無邪気に笑いながら、先生は先に席を立った。
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!