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優しい口調で言い放つ先生の言葉に、何を言えばいいのか困ってしまう。
「私……は」
そんな大層なことはしていないのに。
ただ自分が望んだまま、しただけだ。
「……壊れていいんだ」
ぽつりとこぼれた声に反応する。
「それだけ仲間を、居場所を見つけられて成長できた証だから……壊してもいいんだよ」
「……頭が痛いです」
難し過ぎて、理解が困難で―――だけど。
「先生……?」
「ん?」
「少しは……自惚れてもいいんですかね」
邪魔者だった自分の存在を、彼は受け入れてくれたのだと。
少しは、必要としてくれたのだと。
「自惚れるも何も、事実じゃない」
あっさりと答えをくれる先生が、笑う。
「……何に悩んでるか知らないけどさ」
いつの間にか綺麗に食べ終わった定食を前に、丁寧に手を合わせた。
「誰かを傷付けてでも、やらなきゃいけないこともあるよ」
「―――っ」
淡々と、当たり前のように言う。
やっぱり、あなたにはすぐ分かってしまうんだ。
「葉月ちゃんが正しいと思った答えを言えばいいと思うよ。それはきっと、間違ってないから」
言葉と合わず、悪戯を考えた子供のように無邪気に笑いながら、先生は先に席を立った。
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