梅雨~距離~

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葉月はずっと同じ本を読んでいる。 かなり分厚い本で、しおりを挟んだ先もかなりの量のページがあった。 「おもしろいのか?それ」 「……読んでみる?」 ずいと差し出され、咲良は丁重に断った。 「俺は読書とか苦手だから。頭痛くなる」 「いい話なのに……」 残念そうに本を鞄にしまう。 「悪いな。その内読みたくなったら貸してよ」 「……分かった」 少し疑いながら葉月は頷いた。 ザァ―…… ザァ―…… そのまま 会話はしばらく途切れ、窓を叩く雨の音だけが響いた。 これがいつも通りだ。 葉月と俺はよく会話が途切れる。 お互いのことをそんなに知っているわけでもないので、話す種がないと言えば当然だが 葉月も俺も口数がそんなに多いほうじゃないから無言の時間が流れるのはしばしばあった。 (いろいろ聞きたいんだけどな……) 出会いがあまりにも突然で不可解だったため、葉月には聞きたいことが山ほどあった。 関わろうと決めたものの、謎があるとすっきりしないのでとりあえず聞いてみようとした。 だがいざ聞こうとすると、葉月は頑なに口をつぐんで何も話そうとはしなかった。
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