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「じゃあそれを話してくれたら、もう葉月ちゃんとは会わないの?」
診断をカルテに記入しながら佐倉は問う。
「知りたいだけなんでしょ。じゃあ答えたらもう用済み?」
「変な言い方するな。そういう意味じゃない」
俺は、そんなことはしない。
考えてもいないのに。
「関わろうと決めたけど、信じてはいないくせに」
「…………」
言葉に窮する。
そうだとも言えないし、違うとも言い切れない。
「意外と頑固だよねぇ~君も、葉月ちゃんも」
何て表していいか分からない二人の距離。
遠いのか、近いのかさえも計れない。
「別に無理に聞かなくてもいいんじゃない?誰だって言いたくないことの一つや二つあるでしょ」
「……俺だけだ。知らないのは」
「そぉかなぁ?」
ボールペンを胸ポケットにしまい、書いていたカルテを閉じる。
「お互いに知らないこと、まだたくさんあるでしょ。いつまでもそれにばっかりこだわるのやめたら?」
「だけど……」
「本当にそれだけなの?葉月ちゃんと話したいのは」
何を言っているんだろう。
当たり前だ。
それを聞かないと、関わった意味がない。
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