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いつもへらへらしているが、たまに妙に的を射た発言をする。
俺の主治医として結構長く付き合っているが、未だに底が見えない。
「葉月ちゃん今日も来ないんだねぇ~寂しいねぇ?」
「……喋んなって言っただろ」
せっかくの晴れの日なのに。
なんでしょっぱなからこいつの顔を見なきゃいけないんだ。
「はい。膨れない、いじけない、苛つかなぁい。今日は咲良君にお届け物があります」
「……郵便だろ。早く渡せよ」
この病院は、都内から離れた郊外の森に建っている。
そのためここに来る郵便物は毎週水曜日にしか届かなく、小さな病院なので医師達が順番に患者達に配っていた。
「珍しいよねぇ~咲良君に郵便。はい」
言い方は気にくわないが、確かに珍しい。
ここに来て、数えるくらいしか俺には送られてこないのに。
「それ一通しかなかったよ」
そう言って渡されたのは、今の季節にふさわしい紫陽花の挿し絵の封筒。
裏を返し宛名を確認する。
「………っ!!」
一瞬
自分の目を疑った。
まさか、彼から手紙が来るなんて
「咲良君?」
いつもと違う様子に気づいたのだろう。
佐倉は心配そうに声をかける。
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