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「……う」
重い瞼をゆっくり開く。
目が覚めたのなら真っ先に空が見えるはずなのに
今ここに広がるのは
何もない、白い空間。
「夢か……それにしても」
めったに見ない貴重な夢がこんな何もない空間なんて。
「あんまりだろ……」
自分の想像力のなさに呆れてしまう。
(早く起きろよ。俺……)
普通夢の中って楽しかったり、いつもと違う感じになれたりするんじゃないの?
何の変鉄もないこの場所にいてもつまらない。
「……ったく、何が」
『何だか分からない?咲良』
急に後ろから聞こえた声に、俺は驚いて振り返る。
『あんたが望んだんだよ』
ゆらりと揺れる灰色の影がこちらに近付いて来る。
クスクスと笑う耳障りな声が耳に刺さった。
「な……っ」
影が形となり、その姿がはっきりと現れる。
同じ顔
同じ姿
そこに立っていたのは
『ねぇ……咲良?』
もう一人の、俺だった。
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