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「私と……同じ」
もうずっと前のことのように、葉月の言葉が蘇る。
同じ台詞なのに、どうしてこんなに違うのか。
なんで葉月の言葉は、真っ直ぐに俺に届くのか。
『……咲良?』
―――あぁ。
そうか。
理由なら、もう分かっている。
「違う……」
目をそらさずに、今度こそ「俺」を直視する。
「俺はお前とは違うよ」
その言葉に迷いはない。
偽りも、誤魔化しもしない。
「他人ならいらないと思った。あんな思いをまたするくらいなら、拒んで遠ざけて……ちょうどこんな空間に生きたいと思ってた」
『……だから俺が叶えたんだよ?』
「そう。お前が叶えた。だけど……もういらない」
俺に必要なのは、こんな閉鎖的なものじゃない。
『なんで……?嘘だよ。だって』
「気付いたから。俺がしなきゃいけないこと」
たぶん、きっと
まだあの頃と決別するのは難しい。
過去に捕らわれたままで、何か変えようとしたところで
先なんか見えはしない。
「こんな所に隠れるほど、暇じゃなくなったんだよ」
だが
たとえ少しずつだとしても
進まなければ、変わることさえできなくなる。
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